文化財と仏様
Ⅰ 本尊 薬師瑠璃光如来(県指定文化財)秘仏
像高52.5cm。桧材。寄木造。平安時代後期の作。秘仏。
梵名でヴァイセイジャ・グル・ヴァイドゥーリャ・プラバ・ラージャ
直訳すると「医薬の先生にして、瑠璃光の王」の意。
東方の浄瑠璃世界の教主とされます。薬師如来がまだ菩薩として修行中であったとき十二の誓願を立てられます。その中の6番目「諸根具足」と7番目の「除病安楽」が特に取り上げられた結果、病気平癒に験のある現世利益の仏様として古くから信仰を集めています。
代表的な姿のひとつ、右手で施無畏印を結び、左に薬壷を持つのは、衆生の心の不安を取り除き、心身ともに癒してくださることを表しています。
Ⅱ 薬師堂(県指定文化財)
寛永13(1636)年正月、第31世宥順のもと、本尊薬師如来をお祀りするお堂として建てられました。その場所は現在と異なり客殿北側の山の中腹だったようです。その後正徳2(1712)年、第38世龍厳のとき、現在の地に移されました。
木造方形造、茅葺、間口5.4m、奥行き6.4mで桃山建築の特徴をよく表したものとして県の文化財に指定されています。
Ⅲ 磬(県指定文化財)非公開
磬(けい)とは、仏具で鳴り物の一つです。鋳銅製、蝶形で、重さが約260g、縦9cm、横16cm、厚さは0.3cm。左右の縁に線刻で「深萩西山寺磬 建武元年甲戌 九月□日 沙弥妙覚 敬白」と記されています。南北朝時代の貴重な金石文史料として県の文化財に指定されています。※建武元年=西暦1334年
Ⅳ 前立薬師如来、日光菩薩、月光菩薩、十二神将(斎場に安置)
正徳3(1731)年造立。前立本尊薬師如来、脇侍の日光・月光菩薩、そして眷属の十二神将は、昼も夜もなく四六時中薬師様の功徳が及ぶことを表しています。
本尊が秘仏であるため、皆様をお迎えしてくださるのは前立のお薬師様です。眷属として日光菩薩、月光菩薩さらには十二神将がいらっしゃいます。十二神将の被る兜の上には十二支の動物がついています。日光月光の両菩薩で「昼も夜も」、十二神将で「あらゆる時間に」お薬師様の功徳が衆生に及ぶことを表しています。
Ⅴ 金剛力士(仁王と伽王)
力くらべの伝説がある仁王様。
梵名ヴァジュラダラ。金剛杵を持つ者の意。元々は諸尊を守護する夜叉神でしたが、仏教に取り入れられるとお釈迦様を近くで警護する役目を担うようになりました。本来は独尊でしたが、結界に当たる門に配置されるようになると、阿形、吽形一対に分化され「二王(仁王)」と呼ばれるようになったようです。
Ⅵ 弘法大師(客殿に安置)
宗祖弘法大師像。境内には鯖大師さんもいらっしゃいます。
平安時代初期に活躍された真言宗の開祖です。真言宗の教えを一言でいえば、「即身成仏」でしょう。すなわち生き生きとした人間世界の中で仏様の正しい知恵と大いなる慈悲を体得することこそ仏教本来の教えであり、現実の世を生き抜く仏身つくりを説かれました。
Ⅶ 両部大日如来(斎場に安置)
梵名マハーヴァイローチャナ。真言宗において両部の大典とされる「大日経」「金剛頂経」に説かれる、密教の体系の中心をなす仏様です。密教では仏法そのものが大日如来であり、全ては大日如来から現出されるとされます。そのため通常、如来は、菩薩と異なり華美な宝飾はまとわないのですが、大日如来は密教の根本仏として宝冠を被るなど、王者の装いで表されます。右人差し指を左手で包み込む智拳印を結ぶ金剛界の大日如来と、法界定印を結ぶ胎蔵大日如来はそれぞれ仏の智慧と慈悲を象徴しているとされています。
Ⅷ 延命地蔵菩薩(客殿に安置)
普通は立っている姿の多いお地蔵様ですが、このお地蔵さまは座ったお姿で表され、
とくに健康長寿にご利益があるとされます。
梵名クシティガルバ。大地を包蔵する意味を持ち、大地のような堅固な菩提心を持つ仏様とされます。インドではあまり目立たない存在だったようですが、仏教が東アジアに伝わると、あらゆる地獄をかけめぐり、もれなく救済してくださるほか、六道輪廻する全ての衆生を救ってくださる仏様として信仰を集めるようになりました。当山のお地蔵様は座像で、あらゆる功徳を網羅し、延命を成就する仏様とされています。